「いやー、大漁大漁」
「色々と仕入れられたわね」

 スラムの出口へと向かう俺とユリアーナの会話が弾む。

「スラム街に潜んでいる悪人も意外と色々なスキルを持っていたな」

 スラム街とは暗殺や盗賊などをはじめとしたさまざまな犯罪に手を染めた者たちが集まる危険地帯だ。その危険地帯で生き残っているのだから、何の力も持たないってことはないだろうとは思っていたが、予想以上に芸達者な悪人が多かった。

 なかでも驚いたのが光魔法の使い手が多かったことだ。
 そして、その光魔法のスキルをできるだけ集めて欲しいとユリアーナから指示があった。

「最大の収穫は光魔法ね。これで憂いが一つ消えたわ」
「何か憂いていることでもあったのか?」
「失礼ね、これでも悩み事をたくさん抱えているのよ」
「光魔法のスキルを集めたのはロッテの光魔法を強化するためかと思っていたが違うようだな?」
「それはそれで早いうちに何とかしたいと思っているわ。でも、もっと優先すべきことがあるから――」

 話の途中でユリアーナの笑顔が曇った。

「どうした?」
「油断したわ」

 その瞬間、左手の路地の奥からナイフが飛来し、俺の足元へと突き刺さった。

「チンピラか」
「魔力感知を怠った途端このありさま。スラムって本当油断ならないところね」

 ため息を吐く俺たち二人をよそに路地裏から人相の悪い男たちが姿を現す。
 人数は五人。何れもナイフや抜き身の剣を手にしている。