俺は少女に微笑みながら、

「見た目は派手だけど、やっていることは大したことないのさ」

 ビニールハウスならぬ強化ガラスハウスを、それぞれの区画を覆うようにして出現させた。
 これで第四段階終了。

「宝石のお家……?」

 かろうじて言葉になって俺の耳に届いたのはその一言だけだ。
 他の子どもたちは驚きのあまり言葉にならないか、言葉すら出せずにいた。

「子ども相手に何を得意になっているのよ、と言いたいところだけど……、これは凄いわね……」

 ユリアーナの頬を汗が伝う。

「だろ? でも、まだ続きがるんだぜ」
「いちいち驚くのも疲れたし、驚く子どもたちを見るのも飽きたわ。そろそろ、終わりにしない?」
「安心しろ、こいつを設置して終わりにする」

 俺は水魔法を付与したスプリンクラーの機能を備えた魔道具を彼女の眼の前に差し出した。
 だが反応したのは幼い少女二人。

「なになに? 今度はなに?」
「お兄ちゃん、それなあに?」
「これ? これはな、毎日の水まきを皆の代わりにやってくれる魔道具だ」

 子どもたちに魔道具の説明をしながら、強化ガラスハウスの一つに設置して、試験運転を始めた。
 散水が始まると子どもたちの間から歓声が上がる。

「うわー、凄ーい」
「虹だ!」
「お家の中に虹ができた」

 無邪気でいいね、子どもは。

「残り十九個はどうするつもり?」
「スラム街もあったし、水魔法が使える悪人の十九人くらいいるんじゃないか」

 俺は彼女に、夕食後のスラム街散策計画をささやいた。