「俺、みんなに知らせてくる!」

 一人の男の子が孤児院の建屋に向かって駆けだした。

「それで、今度は裏庭で何をするつもりなの?」

 先程まで殺伐とした会話をしていたユリアーナが子どもたちに交じって女神のような見惚れるような微笑みを浮かべた。

「これだけの広さの土地を荒れ地にしておくのはもったいないだろ。裏庭すべてを畑に帰る」
「え? 裏庭全部をですか?」

 ロッテが驚きの声を上げた。

「問題ない、院長の許可はもらった」

 先程、『裏庭に畑を作りたい』と院長へ願い出たら快く承諾してくれた。
 広さには言及していなかったが問題ないだろう。

「広い畑を作って頂いても世話をする人手が足りないので、維持するのが難しいと思います……」
「問題ない」

 そう言って早速作業に取りかかる。

 地上から二メートル程のところまで裏庭の土を錬金工房へと収納した。
 突然、子どもたちの眼前から見覚えのある荒れ地が消え、替わって、二メートル程掘り下げられたくぼ地が現れた。

 驚きのあまり声も上げられず、息を飲む音だけが辺りに響く。
 子どもたち、いい反応だ。
 お兄さんは君たちの期待を裏切らない反応に、モチベーションが一気に上がったぞ。

 特にロッテ。
 大きな目を見開き、愛らしい口を大きく開けた顔は実にチャーミングだ。