翻って、教会の敷地を利用しての市場は十日毎に立ち、商業ギルドの出店許可書が不要のため、一般の家庭で作られた手料理が並んだり、不要になった衣類や家具が並んだりする。
 また、裁縫が得な主婦などはその場で繕いものをするなど、販売されるものも多岐に渡っているそうだ。

「中央通りの市場は他の市や町から大勢の商人が来るので賑やかですし、外国の珍しい商品も並ぶから見ていてとても楽しいですけど、あたしは教会の敷地に立つ市場の方が落ち着いていて好きです」

 そう語ったロッテの笑顔はとても幸せそうだった。

「次に教会に市場が立つのはいつなんだ?」
「三日後です」

 ターゲットの司教はここから三日の距離にあるグラの村に滞在している。教会の敷地に立つ市場を楽しみながらターゲットの司教をゆっくりと待つことにしよう。

「三日後にみんなで教会の市場に行こうか」

 後ろに付いてきた孤児院の子どもたちを見回しながら言うと、ロッテと子どもたちが驚きと期待のこもった目で俺を真っすぐに見つめた。
 俺はロッテと子どもたちに向けて、笑顔でもう一度同じ言葉を告げる。

「三日後にみんなで教会の市場に行こう」
「うっ、あ、ありがとうございます」

 ロッテが泣き出し、子どもたちには驚きの表情と笑顔が広がる。

「え? いいの? 本当?」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「俺たちも? 本当に連れてってくれるの?」

 口々に確認を求める声や歓喜の声が入り混じって上がり、それは瞬く間に子ども特有の甲高い歓声に変わった。