「そこで、だ。一つ私の策に乗ってみないか?」
「策です、か? 商人なので騎士様のような難しいことは分かりませんが……」

 形だけ難色を示す。

「何、難しいことはない。私の言う通りに動いてくれれば、君は盗賊を討伐して手にすべき資産を守れ、我々は騎士団内部の膿を出すことができる。双方にとってメリットがあると思うが、どうかね?」

 おいおい。盗賊の盗品はもともと俺に所有権がある、と言ったばかりじゃなかったか?

「分かりました。では、コンラート隊長のご指示通りに動きましょう」
「決まりだ」

 コンラート隊長が提案した作戦内容は単純明快なものだった。
 盗賊のアジトから持ち帰った盗品を持ち帰ったところに、第二部隊が踏み込んでパウル隊長以下、かかわった騎士団員たちを捕縛するというモノだ。

 盗品はもともと保管されていた倉庫の扉を開ける瞬間にでも錬金工房から倉庫へ移せばいいので特に問題はない。
 自分の手を汚さずに解決できるならそれに越したことはないだろう。

「作戦通りに事が運ぶと第一部隊はどうなりますか?」
「第一部隊を我々の部隊が糾合し、新たに第一部隊と第二部隊を編成し直すことになるだろう。まあ、第一部隊は事実上解体だな」

 コンラート隊長が得意げに語った。
 第一部隊と第二部隊が互いに噛み合って自滅するのが理想なのだが、ここは第一部隊を解体できるだけでも良しとしよう。

「驚きました。隊長は策士ですね」
「いやなに、これくらいは大したことはない」

 そう言って上機嫌で笑いだした。
 何ともこずるい大人が多いことだ。異世界も世知辛いよなー。

 日本で詐欺事件などの知能犯のニュースを幾つも見ていたせいか騎士団の隊長二人が小悪党にしか見えない。

 この状況を何とか利用できないモノだろうか?
  俺はそんなことを考えながら、俺はコンラート隊長と握手を交わし、ユリアーナたちと合流するため孤児院へと向かうことにした。