「盗賊から奪った盗品は君のものだ。アジトに残してきた盗品は後日運びだせばいい。もちろん、その間に誰かが発見して運び出した場合は運び出した者が所有者となる」

 知っているが、不正がまかり通るような騎士団相手に正論を言っても取り合ってはもらえないだろ。
 それどころか、機嫌を損ねたら冤罪で投獄されかねない。

「え? どういうことでしょうか?」
「パウルは君が法律に疎いことを悪用し、本来君が手にすべき盗賊の所持品を不当に奪おうとしている」
「たとえ一度に運びだせなくても、盗賊を討伐した者に所有権が移るのはこちらの国でもそうだったんですね」

 外国人なので法律に疎い振りをした。

「要はパウルのヤツが君の資産を横取りしようとしているわけだ」
「そんな! 騎士団の隊長さんがですか!」

 心底驚いたふりをする俺にコンラート隊長が同情した表情で言う。

「パウルはこちらに赴任してくる前から良からぬ噂があってな。私としてはヤツのシッポを掴んで悪事を白日の下に曝したいと考えている」

 内部で処理して第一部隊の隊長を更迭するのかと思ったが違うようだ。

「同じ騎士団として恥になるのではありませんか?」
「隠蔽する方が騎士団の恥だ。汚職まみれの第一騎士団を告発することで、我々第二部隊が公正、且つ、清廉であることを知らしめたい」

 第三、第四部隊には一歩リードしているから、ここで競争相手の第一部隊の汚職を暴くことで第一部隊を蹴落とし、騎士団内部での優位性を不動のものにしようという魂胆か。

「具体的に私は何をしたらいいでしょう? それと、私の得るメリットを教えて頂けますか?」
「さすが商人! 話が早くていい」

 こちらが利害で動く人間と判断しようだ。我が意を得たりとばかりにコンラート隊長が身を乗りだした。

「明日、パウルを案内して盗賊団のアジト跡に向かうな?」
「ええ」

 盗賊のアジト跡には異空間収納に収まりきらなかった盗品が残っていることになっている。それをパウルに引き渡すためにアジトへ案内することになっていた。