「なるほど、この世界が正常に近づくにしたがって女神様の力も復活すると言うわけだ」
「理解が早くて助かるわー。それと、女神様じゃなくて『ユリアーナ』ね」

 愛らしい笑顔でウィンクをした。 
 心臓の鼓動が途端に早まる。
 俺は鼓動が早鐘のように打っているのを気付かれないよう、平静を装って一つの疑問を口にする。

「それで、何で俺が選ばれたんだ?」
「別にたっくんを選んだわけじゃないのよ。慌てて召喚したら、それがたっくんだった、ってだけ」
「何てこった……」

 勇者として召喚されなかったまでも『女神様に助手として選ばれた』、と自分のことを少し誇らしく思ったことが恥ずかしい。
『自分の中に特別な力があるから選ばれたのでは?』、と胸を高鳴らせていた自分を殴ってやりたい。
 俺はあまりの恥ずかしさと情けなさから、頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。

「どうしたの?」

 ユリアーナが無神経に俺の顔をのぞき込む。

「何でもない、何でもないから、そっとしておいてくれ」
「涙拭く?」

 眼の前に黒いレースのハンカチが差しだされた。

「要らない。ちょっと目にゴミが入っただけだから大丈夫だ」
「そう?」
「ところで、最後の力ってことは、ユリアーナにはもう力が残っていないってことなのか?」