隣に座る。舞菜と野須くん、手を繋いであっちこっち出口に向かっているのに反対へ進んでいる姿が可愛い。


「…いいなあ、両想い」


失敗も成功も笑っている。楽しそう。好きな人に同じように思われるって、どんなに幸せなんだろう。


「めずらしいな。なんか、人を羨んだりするの。両想いになりたくて好きになったわけじゃないんだろ?」

「…そもそも、どうして好きになったのかわからないよ。片想いでもいいって思って好きになったわけでもない。ただ好きになった瞬間、なんとなく、叶わないんだろうって思ってたのに惹かれちゃった」


いろんな恋があるんだろうね。

そんな中で、どうして彼だったのかな。


「だけどやっぱり羨ましいよ。わたしは昨日本気で振られちゃった。もう絶対傍にいられないだろうし、目が合うことすらないかもしれない」


舞菜も、佐伯さんも、高藪くんに想われる結香子も…みんな羨ましい。わたしより幸せな気がする。

わすれないでって言ったけど、きっと晴臣先輩はわたしのことなんてわすれちゃう。

憐れ。惨め。人のこと羨むくらいさせてほしいよ。



「人の気持ちは変わるよ」


晴臣先輩と反対のことを言う。


「槙野はこれから違うやつを好きになるかもしれないし、もしかするとやっぱりあの先輩が好きだから、静かに想っていくことを決める時が来るかもしれない」