学園祭の2日目は、わたしが彼女の前で晴臣先輩を連れ去った話で校内が持ちきりだった。

晴臣先輩は学校に来なかったみたい。

なんでもお母さんの体調が悪くなってしまったらしい。久しぶりに話した真波先生から聞いた。


心配だったけど、もうそれを伝えるすべがなかった。



「おみ先輩のこといい加減諦めたら?彼女いるんだし」


トイレで佐伯さんと仲良しなクラスメイトに話しかけられた。


「…昨日振られたからもう…放っておいて」

「いやいや、彼女いる人に告白するとか人間としてどーなの?ちょっと前からカンジ悪いとは思ってたけどさ」


たしかに。思い返したら最低なことばかりしてる。周りが見えてなかった。そりゃ舞菜だって応援したくないよね。

何も言えずにいると結香子が中に入ってきた。


「あ、陽花里、鈴央くんが呼んでたよ」

「委員会のことかな。ありがとう」


助かった。なんてほっとする。

恋愛をして自分が弱いことに気づいた。何を言われても平気なんて嘘。佐伯さんの名前すら本当は聞きたくない。


「高藪くんおまたせ。どうしたの?」


探すと教室にひとりでいた。昨日わたしが振られた場所。


「見て。尋樹と稲場、すっげー迷ってる」


どうやら繁盛具合を上から眺めているらしい。