引き留めるためだけの、自分が気に入られたいがための、覚悟も何もないわたしの言葉なんて晴臣先輩には届かない。
初めから無謀だった。
知ってたよ。あのTシャツを預かった時から予感してた。
「…そういうところに惹かれたんだと思います……」
「……」
「素直にありのまま行動しているようで、全くそうじゃないの。自分を犠牲にして、それでも喉から手が出るほど欲しい幸せが、幸せとは真反対の場所にあって……それを掴みにいこうとしてる。…ひとりで。真っ直ぐ…真っ直ぐに。初めからなんとなくそういう人な気がしてました。心惹かれるってこういうことなんだって、教わりました」
あきらめなくちゃ。
「…でもどうか傷つかないでください」
終わりにしなくちゃ。
「どうしようもない時は、わたしみたいな味方がいること…わすれないでほしいです。人は、やっぱりわたしには殺せないけど…晴臣先輩が苦しんでることも、笑ったことがあることも、どんな気持ちで泣くのかも、優しい言葉を話せることも、お母さんの絵を大切に思っていることも、憶えてますから。これから先何があっても何もなくても、味方はここにいることを、わすれないでください」
終わらせ方なんて知らないけど、いつか残像になるまで。
「応えてくれてありがとうございました…」
手放す。そう決めた。
だって本当に叶わなかった。
どうしたって届いてくれなかった。
これ以上は無理だよ。
そんなに強くないよ。