「おれは……」


だって顔が赤くなってるよ。

図星だったんじゃないの?わたしのこと、必要としてくれたことがあったんじゃないの?


「誰かを好きになったり、信じたり、期待したくない。おれがその対象になるのも嫌なんだよ。叶えてやれないんだよ」


だけど、結局叶わない。敵わない。

近づけたって思ってもすり抜けていく。捕まってくれない。何も掴めない。

ただ残像だけが、わたしの心に残って。


わかるよ。

明日になっても、1年後も、3年後も、10年後も、誰かと結婚できたとしても、家族ができても、おばあちゃんになっても……彼の残像を追いかけたこの日々を、わたしは生涯わすれることはできないんだ。


「ごめん。…ごめんな。頼むから、もうおれに関わらないで」

「だけど…っ、気持ちが変わるかもしれない…!」


「変わらないよ」



…あきらめなきゃ。


「おれに、おれ自身を好きになってほしいって言ってくれたことあったよな」


晴臣先輩はむかしを思い出すみたいに言う。きっと遠くを見ているからだ。


「好きになれるとしたら、あいつを殺した時だよ」


理解できないことが悲しい。

理解してもらいたいって、思ってないこの人が儚い。


「おれは真っ当には生きられない。正しさなんて要らない。これから先、そんなやつに巻き込まれなくていいんだよ」


じゃあわたしが殺してあげるって言っても、絶対彼は喜ばない。