浅く腰掛ける。息を吸って、深く吐く。

人前で演奏なんていつぶりだろう。発表会は着飾るから背筋が伸びるけど今日は制服のスカートにクラスTシャツ。緊張する。

そういえば晴臣先輩はクラスTシャツ着てなかった。仮装もしてなかった。


残念。見たかったなあ。


ギターもドラムもベースもトランペットもいる。学年もクラスもバラバラでへんてこな合奏団が音楽室に出来上がった。


ドラムが一番最初の音を鳴らす。

それにわたしが二番目の音を合わせる。

他の個性豊かな音が重なって、ひとつの曲になる。


ひとりで生きているみたいな態度をする晴臣先輩。

普段はひとりぼっちな音たちも、集まればこんなふうに響くんだよ。

だからひとりにしたくないし、そう思ってほしくない。誰も信じられないなら、わたしは、信じてもらえるようになりたい。


どうしたらいい?真っ直ぐなほうがいい?それとも捻くれていたほうがいい?

教えてよ。

晴臣先輩が求めるもの。

何も求めていないなら、その理由を教えてよ。


こわいなんてもう思わないから。

ちゃんと知りたいよ。逃げたくないよ。



「おみ……?」



弾き終わって彼を見ると、泣いていた。



慌てる佐伯さんと、胸が詰まるわたし。

彼のもとに駆け寄りその手をとる。きっと見られたくなかった涙だと思う。だから逃がしてあげる。