必死な声。

突き刺さる。



「どうして…結香子は佐伯さんの友達じゃん。わたしの味方なんてしたらどうなるか…」


ふてくされたようにそう呟くと結香子は笑った。


「憧れなの。勝手に、憧れてたの、いつも芯が通っている強い槙野陽花里に。だから陽花里に諦めて欲しくないってわがままな気持ちもあるし、お節介したいの!」


初めて話したのはつい最近。むしろわたしの方が憧れたいくらいな女の子。

高藪くんが好きな子。


手を引かれる。走り出す。晴臣先輩がいる場所に。


学園祭だもん。本当は何かしたかった。
できることならもう一度気持ちを伝えたかった。
晴臣先輩がわたしをどう思っているか知りたかった。

でも、それよりずっと、晴臣先輩の記憶に残る自分になりたいってエゴを持っている。



「飛び入り参加募集してるって聞いてきました!なんの曲でも、なんのジャンルでも楽譜見せてもらえれば弾けますっ」

「結香子?なんで槙野さんといるの?」


佐伯さんと、その隣に晴臣先輩がいた。


「友達なの」

「はあ?」

「ごめん、今は黙って聴いてて」


結香子ってこんなはっきり物事を言う子だったんだ。知らなかった。好きかも。

高藪くんは見る目があるね。


先輩方から渡された楽譜を読むと流行りのバラードだった。

ラブソング。


「君たち楽器は?」

「ヴァイオリンと…」

「ピアノ、お借りしたいです」


ちゃんと聴いていて。