肩に腕がまわる。思わず生唾をのんだ。


「おみとふたり乗りデートしてたコ」


おもちゃを見つけたような目が笑って覗き込んでくる。

これ、素直に答えちゃいけないことだ。


「あの日どこ行ったの?おみ、オレたちとの約束スルーしてんだよね」

「…デートしてません」

「いやいやそうじゃなくって。じゃあ聞き方変えるけどあいつの弱味、なんか知ってるっしょ。教えて」



いつも一緒にいる人たちなのに、何、この台詞。



「弱味なんて知りません。あの日も、ただ偶然会ったから話していただけです」


「ふうん。偶然ねー……知ってる?あいつ、あの公園からいつもきみがどっかに行き来してるの見てたんだよ。だから偶然じゃないんだよ」


「え……」

「弱味、とか聞いたけど…もしかしてきみかも?」



口元に弧を描く。

晴臣先輩と初めて話した日、ヤマって彼に呼ばれていた人。教室で彼を非難する人に対して怒りを露わにしていた人。


「わたしなんて……」


晴臣先輩が、わたしを見ていた?

いつも、いつも、いつも届かない視線を送るのはわたしの方だったのに?


「それかあの母親かな〜。あの異常におみに執着してる母親。それは知ってる?」


知ってるって言っちゃだめな気がする。

首を横に振ると顎を掴まれた。


「そういえばけっこー可愛いよね」


脈略のない言葉を唐突に投げかけられる。