「センパイのを勝手に借りて平気なんですか」
「本当はだめだろうけど、おれのほうが強いから」
「何の強さですか」
「ヒエラルキーを創り上げるボーリョク、とか?」
「はあ…晴臣先輩って本当に人に暴力ふるったりするんですか」
「血ついてるのとか見てるじゃん。血流させるくらい殴ってるってことだよ。つーかなに、今日はなんか質問攻めだね」
そっちだって初めて質問してきたくせに。
「面倒ですか」
「べつに。じゃあこっちも質問していい?」
何を?
「どうぞ…」
改まると緊張してしまう。
「もしかして、おれが初恋?」
からかってるのかと思ったけど、表情は真剣だった。
そうだけど、そうだって言ったら、そのままわたしのものになってくれないだろうか。
「…あんまり答えたくない質問ですね」
「なんで」
「だって晴臣先輩、嫌がるでしょう」
つぶやくようにそう言うと、いつの間にか尖っていたくちびるを掴まれた。
なんなの痛い!
「莫迦みたいだって笑ってやるよ」
本当かよ。嘘つき。
離れていく手。目で追いかけていると自転車のハンドルを握った。早く乗れと言わんばかりに首で指してくるから荷台にまたがる。
こんなふうになれるなんて思っていなかった。
きっとわたしたちはただの先輩後輩の間柄で、この時間はこの人の気まぐれにすぎないんだと思う。
それでもよかった。