お母さんに連絡しながら彼の後ろを歩く。
「槙野の家族ってどんな?」
どんな、とは。聞き返そうと思ったけど、わたしのことをまた尋ねてきたことに心が踊りそれどころじゃなかった。
呼吸をする、返事をする。それで精いっぱい。
「父と母と4つ年下の弟がいます。関西に母方の祖父母がいて、父方の祖父母は近所に暮らしていて、母はスーパーのパートに出ています。父は建築の仕事をしていて、弟は可愛いです。父方のおばあちゃんは週3でご飯を作りにきてくれて、母方のおじいちゃんはわたしの誕生日にケーキを作りに来ます。なにやら我が家の伝統らしく…。みんな、優しいです。理不尽に怒られた記憶も何かを強制された記憶もなくて、わたしが楽しいことを見つけると一緒に喜んでくれるんです」
こんな答えで合ってるかな。
聞きたかったことが違うものだったらどうしよう。ちゃんと違うって教えてくれるかな。
「…いい家族だな。だから槙野が産まれたんだ」
遠まわしで、だけど、素直すぎるほめ言葉。
「晴臣先輩のこと…お母さんに話したことあるんです。好きな人ができたって、知らないけど強い意志がありそうな人だって、その人がいると毎日の日常がまぶしくて明るくなるんだって…話したらやっぱり喜んでくれました」
そう。
消そうとしても、悩んでも、彼女がいても、好きな気持ちが変わらないの。