顔を見合わせて笑う。
委員決めの時、先に高藪くんが決まって、高藪くんがわたしのことを誘ってくれた。結香子じゃなくてよかったのか聞いたら「何かに集中できたほうが気持ち楽になると思うよ」ってさらりと提案された。
そうやって気を遣ってくれたから甘えさせてもらうことにした。本当にこの3週間いそがしくて楽しくて、晴臣先輩のことを考える時間はめっきり減った気がする。
それでも傘は机の中に隠れたまま。
下駄箱の場所だって知ってるし、また真波先生を頼って返せばいいのに、機会がないなら、持っていたくて。
未練たらしいなあ。
人はどうやって失恋から乗り越えるんだろう。どうしたらわすれられるんだろう。
「新しい恋をすればいいんだよ」
紹介してくれることもないままお兄さんのお友達とやらに彼女ができてしまったみたいで、だけど代わりに同じクラスの彼氏ができた舞菜がハンバーガーにかぶりつきながら言う。
「なんか舞菜さんに言われると…」
「説得力あるでしょ?」
同じ状況だったはずなのに可愛い笑顔。マスタードが歯についててもきゅるんとキュートなのって何事?
舞菜が付き合いはじめたのは野須尋樹くん。高藪くんと仲良しなんだ。
かっこいい爽やか少年。何度か話したことがあるけど優しくて話しやすい雰囲気。舞菜のことがずっと好きだったみたいでそう告白してきたんだって。