傘を返す機会が来ないまま3週間ほどが経つ。


先日まで3年生は修学旅行だったけど晴臣先輩は行かなかったみたい。佐伯さんが話しているのを少し聞いた。

今は校内は1か月後に迫った学園祭の準備で慌ただしい。

高藪くんと一緒に委員をすることになって、クラスは校庭に巨大迷路を作る出し物に決まった。


景品もいくつか用意して、なぞなぞをしながら道をさ迷ってもらうの。楽器カフェの希望もあったけど他学年に譲った。巨大迷路の方がすでに案がたくさん出ていたし校庭希望がわたしたちだけだったからちょうど良かった。


「大きな段ボールと発泡スチロールはお母さんのパート先でいっぱいもらえると思う」

「俺も父さんの職場からもらえるよ。他にもそういう人たちはいるだろうし、ボルダリングスペース作るとか宇宙空間作るとか考えてる人たちもいたからいいペースで準備できるんじゃないかな」

「すごい、ボルダリングって手作りできるの?」

「なんかこの動画がいい感じに説明してくれてて」


携帯画面を見せてくる高藪くんはいつもより楽しそうにしている。


「もしかして高藪くんもボルダリング好きなの?」


そう問うと少し恥ずかしそうに視線を逸らされた。


「高いところが好きかも」

「なるほど。屋上で迷路じゃなくてよかった?」

「いやさすがに屋上は無理でしょ」