大雨の日が続いていた。

晴臣先輩はしばらく学校に来ていない。

会うすべもないから、今の状況は彼のことはわすれるチャンスかもしれないと捉えた。


だけどどうしても…出会う前には戻れない。

コンビニに行く時、バイクの音が聴こえた時、校内を歩く時、気づいたら彼のことを探している。いたらいいのになあって考えてしまう。これはもう諦めようって思った。



「陽花里ちゃんっておみ先輩のこと好きだよね」


高藪くんの意中の人である松渕結香子ちゃんに話しかけられたのは放課後の教室で、嵐の中の唐突だった。


「あ、…うん。大好き」

「あはは、素直なのすてきだね。私の他校の友達が見かけたって言ってたよ」


あの人は他校の人にも知られた顔らしい。

場所を教えてくれた。


「学校来ないで此処にいるみたいだよ」

「あ、ガゼボがある公園だよね?ピアノ教室の近くだ……」

「陽花里ちゃん、やっぱりピアノしてたんだね。音楽の授業で上手だなあって思ってた」

「最近またやりはじめたの。ありがとう」


今日はちょうどレッスンの日だから行ってみよう。案外近くにいたんだなあ。


「今度聴かせて。私もヴァイオリン習ってるの」

「似合う!じゃあ一緒に弾こ!」


そう言うと松渕結香子ちゃんは屈託なく笑った。