吸った息が、幸せでできている気がした。
胸がいっぱいになる。
ずるいよ、先輩。
突き返されなかった。
小腹が空いてたんだって言ってくれた。
喜んでくれたようだった。
ぜんぶ受け取ってくれた。
渡しに来てよかった。
渡せてよかった。
淡い水色のハンカチが差し出される。
「嬉しい時でも、となりには誰かが必要でしょ?」
「舞菜…」
「よかったね。仕方ないから、応援する。その代わりちゃんとわたしのことも構ってね」
淋しいや悲しい、もどかしい気持ち。そんな思いになったらなぐさめてもらいたくて一緒に来てもらった。
そんな甘えばかりなわたしを見守ってくれた。
今はよかったねって一緒に喜んでくれる。
「うん!今日プリクラ撮りに行こうよ。あとオムライスが食べたいなあ」
「わーい!仲直りだね!」
仲直りできたらしい。話しかけてよかった。
舞菜が優しくてよかった。
報われたような気持ちになる。
満たされていた。
晴臣先輩が纏う闇も、周りが持つ彼への恐れや痛みも、なんとなく感じていながらも、この頃のわたしは自分の想いを正しいと思えるように行動することに必死だった。
少しずつ皹が入って、割れて、壊れていくことも知らずに。
晴臣先輩にもいつか届くと、望みという欲を抱いていた。