目が痛い。鼻水をかみすぎてその付近の肌が痛い。頭もこころも、どこもかしこも痛い。

あの後舞菜がいろいろと話そうとしてくれたけど、これ以上誰かにあんなに泣いてる姿を見られるのが耐えられなくて帰らせてもらった。


自分が変わっていく。

何を守りたいかが明らかすぎて、他のものに対して冷たくなってしまう。

このままじゃいけない。

こんな自分だから、あの人のことを悪く思われる。


次の日の放課後、それまで誰とも話せずにいたけれど気まずさにぐっと耐えて舞菜の席に向かった。



「舞菜、昨日はごめん」


そうつぶやくと目の前の人の表情は明るさを取り戻した。


「わたしもごめんね…!」

「あのさ、これ、味見してくれないかな」

「…クッキー?」


その問いに頷く。質素なタッパーに詰めた紅茶と抹茶とチョコレート味のクッキー。型が猫しかなかったけどぴったりだと思う。パプリカを選んでくれた時、甘いものが好きそうだった。


押し付けられるがままに3種類を1つずつ口に含んだあと「どれも美味しいけど、とくに抹茶が最高!」と笑ってくれた。


「よかった。…じゃあ、一緒に来てほしいところがあるの。晴臣先輩の下駄箱なんだけど…さっき…お昼の時間に3年の教室に行こうとしたんだ。でも、こわくて、足がすくんで…ひとりじゃ無理なの」


彼に拒まれるのが一番こわい。