中学校にバイク?
何重かに重なる排気音は鈍く鳴り続き、先生たちが慌てて外に出ていく姿が見える。
落書きされたバイクの羅列の中、後ろに座っていた1人が軽やかに地面に降りた。
「あ……」
今はお昼休憩だ。
そんな中、明らかに遅刻の彼。
「本当だ、うわさをすればおみ先輩だね」
みんなからはおみ先輩と呼ばれているらしい。あのTシャツの持ち主が先生たちと対峙する。誰かが教室の窓を開けたのか、あの声が聴こえた。
「だーかーら、これ以上遅れないよーにセンパイたちに送ってもらったんですよ」
校則違反の緑がかかった茶色い髪が風で泳ぐ。
もう充分な遅刻なのにサボらず、むしろあんな堂々と登場している。
わざとらしい澄ました態度。その口元は弧を描いているのに、目は笑っていなくて、近づいてくる彼に先生たちは遅刻や違反を注意する様子もない。
もしかしてあの人。
「有名って、芸能関係とかじゃなく?」
「そんなんじゃなくて見ての通り、不良だからだよ」
まあ芸能人にいそうなくらい顔はかっこいいけどさーと軽く言っている。小学生の頃、あんな人はいなかった。初めて見た。学校にバイクで来たり、周りの人も柄が悪くて、あんな派手な恰好したこともない。