やれやれ、と言った様子の高藪くんの登場に舞菜はやっと口を閉じる。
「稲場は言いすぎ。槙野は自分に集中しすぎ。お互いのこと考えられるんだから、もっとお互いの考えてることを聞いてから思いやりなよ」
むずかしいことを言う。
「わかんないよ…最近の陽花里はおみ先輩のことばっかりだし、そんな盲目な恋愛が良いものだって思えない」
「舞菜の思う良い恋って何?良い恋じゃないといけないの?良い悪いなんて関係ないよ…晴臣先輩のこと好きでいられないほうがつらいし、やめ方なんてわからないし、否定されたら悲しい」
どうしてだろう。彼のことは理解したいと思って一生懸命になれるのに、舞菜のことは理解できないって一線を引いてしまう。
こういう態度が、悪い恋に見せてるんだ。
でも素直になれない。庇いたい。彼のことも、彼が好きな自分のことも。
自分じゃコントロールができない。
感情が乱れて、そこに炎や氷を盾のように纏わせてる。
今は舞菜の言葉よりあの先輩たちの言っていたことに無性に腹が立つ。
晴臣先輩が女の人に触れる。その誰かを好きなのかもしれない。そんなこと耐えられないよ。
「ごめんね、言いすぎた…もっと陽花里の気持ち考えてみるよ」
「じゃあ教えて」
「何を…」
「…嫉妬で出る醜いものの止め方……」
涙が頬を伝う。
あの人を責めるみたいなそれが、嫌。