「あんなのにいちいち反応してたらいつまでも授業に出れないよ?もうちょっと冷静になりなよ」


けっきょく授業に遅刻してしまったけど、そこに怒っているわけじゃないんだろう。教室のみんなに聞こえる音量でお説教をくらう。

夢中になってる舞菜は可愛いけどさ。


「好きな人のあんな話聞かされて冷静でいれるわけないでしょ。…それにわたしはうわさを消そうと思っただけだよ」

「おみ先輩が誰彼構わず手を出す話なんて今さらじゃん…!」

「知らなかったし、…わたし、は、…出されてないもん」

「陽花里に手出したら許さないからね!?お願いだから自分を低くしないで。なんで陽花里がおみ先輩に合わせなきゃならないの?好きならなんでも許しちゃうの?好きだからべつに何されてもいいの?違うでしょ」


違うって思えない。

舞菜が言ってることが正しいことはわかるのに、正しさに反してもいいと思ってしまう。

自分を低くしてるわけじゃない。だけどあの人がわたし以外にしていることを想像するだけで嫌で嫌でたまらない。


「舞菜は晴臣先輩の良いところ知らないから…」

「良いところ?知ってたとしても陽花里にそんな顔させる人嫌に決まってんでしょ!」


「まあまあ、落ちつけってふたりとも」


言い合いがヒートアップしかけたところで止められた。