出会う前はこういう会話と学校の授業と部活だけをしてる毎日だったのに。
「あ。おみの新しいカノジョだー」
廊下ですれ違った何人かの上級生が、話しかけてきたのかただうわさしたのかわからないトーンで言った。
思わず振り向いてしまった。向こうもそうで、心なしか鋭い視線が刺さる。
「あの、それは違……」
「ねえねえ、おみ上手かったでしょー」
「…え……」
「流れができれば誰とでもセックスするし、あいつの抱き方ってなんかクセにならない?淡白なのに気持ちーのー」
わたしの知らない彼を知る人が、きっとたくさんいる。そんなことわかってるつもりだったけど突きつけられると心臓がぎゅっと痛む。
「…知りません」
「え、うそぉ。関わった女はみんな抱かれてるのに」
だって違うから。
うわさだから。
もう3週間彼にぜんぜん会っていないような、少し話したことがあるくらいの立場で。
それなのに勝手に好きになって。
晴臣先輩はちょっと困ってて、嫌そうで。
…他の人とわたし、何が違うの。
同じように見て。同じようにしてよ。
「陽花里、早く行こ」
舞菜が腕を引く。だけどちょっと待って。
「彼女じゃないんです」
「え?」
「ただの片想いです」
わたしって意地っ張りだったんだ。