この人も、あの人も、人のことを見くびってる。


誰かに守ってもらおうなんて思ってない。

心配されなくても、彼を好きなまま自分のことくらい自分でどうにかできる。


「節度や距離を保って、彼に接したほうが身のためよ」

「…っ……帰ります…!」

「待って槙野さん!」


腕を掴まれる。

部活中にわざわざ呼び出して話すこと?

晴臣先輩が聞いてない場所だからって、これは言っていいことなの?


「わたしは、毎日毎日晴臣先輩に会いたくてたまりません。笑顔が見たいし、笑顔じゃなかったら少し悲しくなります。悪く言われてると、庇いたくなる……彼が悪いことをしていたら、それもぜんぶ受けとめて……どうにかしたくなる。だって晴臣先輩は自分のこと守ろうとしてないんです。わたしだけが自分を守るなんてできません…っ」


いつ、どうして、こんなに好きになったのかわからない。自分がこんな感情を抱くとは思ってなかった。


おこがましいかもしれないし、あの人は別に望んでもくれないのに。

悪いひとだとしても嫌なの。好きなひとを悪く言われたくない。好きなひとを否定されたくない。そうされたら悔しくて泣きたくなる。



「放っておいてください…!」


腕を振り払う。

否定を向けてくる人は拒絶すればいい。

そんなふうに思った瞬間だった。


こんな行動、優秀ならきっとしない。

そんな線の引き方をされたくない。対等になりたいと思うのは間違っているのかな。