会いたくて気がつけば晴臣先輩のことで身体中がいっぱいになる。


まんがやドラマの主人公はみんなこんな気持ちだったんだね。

なんてまぶしい感情なんだろう。

これを彼は知らないなら、教えるのは、与えるのは、わたしがいい。


そんな夢のようなことを考えながら晴臣先輩がいる教室の前でホームルームが終わるのを待っていると、窓硝子が割れる音とともに机が廊下に放り投げられた。目の前に転がってる。

突然のことに驚いた。心臓がばくばくしている。一体何?


「てめぇら、おみになんつった?」


晴臣先輩の話をしているみたい。教室の中から女の人の悲鳴と怪訝そうに歪む声。不穏な空気を覗き込んだ。


「機嫌が悪ければ仲間じゃない人間も仲間も殴る蹴るけなす…それを仲間は許すかもしれないけど、僕たちはもう許せない!」

「おまえらもこんな奴の言いなりになっていていいのかよっ」

「久遠の親が権力を持っていたってこいつはただのクズじゃないか…!」



クズ。



本当にそうなの?

何も知らないわたしは、彼が傷つく前に…とその空間に足を踏み入れる。


倒れて壊れた椅子や床に落ちた教科書。胸ぐらを掴まれた人や掴む人。振りかぶった拳と、それに撃たれながらもその奥にいる晴臣先輩へ向かい感情を瞳で訴えている人。


「は、槙野…?」


無我夢中だった。