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望みが叶わないと好きでいちゃいけないなら、望みなんて捨ててもいいよ。
何より自分でも望んでいるものはわかっていないのに。
そう伝えたいと思って、見かけたら次こそは話しかけるんだと意気込んでいたのにそれは空振り。あの日以来晴臣先輩は女の子との絡みを見せびらかす朝のすれ違いをやめたらしい。飽きたのかな。
彼を見ない日々に飽きてしまったわたしは今度はこっちからアクションしてやると脳内で計画を立てる。真波先生宛ての用事を無理くり作って彼の教室に押しかけよう。
決定事項。上級生の階は初めて行くから少しこわいけどもう我慢できない。見たい。会いたい。わたしの存在を認識してほしい。
舞菜に迷惑はかけられないので、深呼吸をして、狙い目だったホームルーム手前の時間。ホームルームはサボっちゃう。
教室を出る前に、高藪くんと松渕さんが話しているのを見かけた。おっとりおしとやかでお似合いだなあ。
勇気出た。がんばろう。
真波先生への用事を持って階段を上がった。
晴臣先輩。
会ったらどうしよう。話しかけたい。話してくれなかったらどうしよう。そうしたらまた明日がんばろう。話してくれたら、携帯を持ってるか聞きたい。持っていたらわたしは親に買ってもらえるようにねだる。
瓶の破片より、睨む瞳より、掴まれたちからより、恋ってこわい。