けっきょく彼からTシャツを取りに来ることはなく、わたしの手元に残った抜け殻。
どうしたら良いかわからず、家で洗濯をして、またお日さまの匂いがするように干す。自分の部屋のベランダにあるそれが、なんだか白よりもずっとまぶしく見えた。
お年玉で買ったブランド店の服が入っていた紙ぶくろに入れて休み明けの学校に持っていって数日経つ。
何の音沙汰のなく未だ持ち主を待っている中身。机の荷物掛けに自分のものじゃないものがあるだけで変な感じ。
いつ渡そう。
「ああ、あれは久遠 晴臣先輩だったけど……もしかして知らないの?」
とうとう舞菜にあれが誰だったのか聞いてみると目を丸くした。頷くとより一層大きな円が出来上がる。
「うそでしょ!?陽花里、それはのんきすぎる!」
「あ、いや、そういえば名前は聞いたことあるかも…?」
「あるかもじゃなくて絶対あると思うよ!すっごい有名人だもん」
「有名人?」
芸能人ならさすがにわかるはずなんだけどなあ。
未だにしっくりきてないわたしに舞菜はふうとため息をつく。言葉の続きを待っていると、突然外から大きく鈍い音が鳴り響いた。
教室がざわめき出す。偶然窓際だったから少し身を乗り出して外を見ると校庭にバイクが5台止まっている。