なんでもいいよ。


「晴臣先輩が笑うと、そのまわりの空気が澄んでいく気がするから好きです。だから笑われてもいいです」


めげないって決めた。

晴臣先輩がもらってくれなくても、わたしがこの気持ちを大事にする。

いつか諦められる時に諦めたらいい。それまでとことん向き合って、逆に彼が諦めるくらい真っ直ぐでありたい。


「槙野ってまじめそうだし、頭もいいと思ってた」

「まじめですし中間テストは学年で10番内に入りました」

「でも莫迦でしょ。おれに近づくと傷つけられるよ。もう解ってきてるだろ」


あきれたように言う。本当にわたしのことを愚かだと思ってる目。

悔しい。晴臣先輩って自分のこと、どれだけ過小評価しているんだろう。



「傷ついていいって言ったらどうしますか…?」



自分のことが嫌いなの?


「なめてんの?」

「…べつに」


思わずムキになる。そんなわたしの手からビタミンドリンクの瓶を奪い取ったかと思えば、彼はわたしの背にあるコンビニの壁に向かってそれを思いきり投げた。


つんざくような音。店内にいる人が驚いて外を見る。

飛び散る液体と細々とした破片。
それは夕方の光を帯びてきらきらと宙を舞う。

こっちにひと欠片飛んできたものを避けることなく頬にかすったのを感じた。