綺麗に笑う人だなあ。

思わず見惚れてしまって、はっとした。


「いや、なんで笑うんですか」

「わかりやすくふてくされてるからおもしろくて」

「ぜんぜんおもしろくないですよ…なんなんですか最近。晴臣先輩のせいでいらいらしちゃうんですけど」


八つ当たりに似ている。それでも彼は笑っている。今まで見た中で一番楽しそうなそれ。なんでこの話の流れでその表情なのか謎だし、余計に腹が立つ。

そんな頭の中に反比例するように心臓がぎゅっと縮まる感覚に、泣きそうになる。



「ごめんね、いらいらさせて。まあ嫌なら朝のも見なきゃいいよね」


嫌だけど嫌なのに嫌じゃないから見るんでしょ。

だいたい朝のもって、やっぱりわざとだったんだ。


「仕方ないでしょう。見つけると目が離せないんですよ」

「素直だね」

「晴臣先輩はそういう気持ちになったことありますか?」


この人はどんな人を好きになるんだろう。

どんなふうに人を好きになるんだろう。



「ないよ。恋愛とかくだらねー。人を好きになるとか嗤える」


自分に恋してる人が目の前にいるのに気遣いもない台詞。最低だね。

だけどこういう人を好きになったのは自分だ。彼ははじめから何も変わらない。


「だったら笑っていいですよ」


ばかにされてもけなされてもいい。下に見られても軽く見られてもいい。