でも毎日教室の隅のお花に水をあげていたり、先生のお手伝いを率先しておこなっていたり、偉くて良い子だって知ってる。
「そうだったんだ。両想いになるといいね」
「おー。槙野も、うまくいったらいいな」
その言葉に曖昧にほほ笑んだ。わたしにとっては両想いなんて夢の先みたいなことだから。
晴臣先輩が現れるのはいつも突然だ。
部活が終わって立ち寄ったあのコンビニで、煙草を買っているところに鉢合わせた。
目が合うなりため息をついてくるから、腹が立ってあいさつもせずにビタミンドリンクをレジに持っていく。
すると横から手が伸びてきて「これも」と黄色のパプリカを出された。意味わからない。
そのままお代を晴臣先輩が払ってくれた。本当に意味わからない。
「今日はパプリカはいらないですし、お金なら払います」
「なんで無視すんの」
「…だってため息つくから…話すの嫌なのかと思ったんです」
べつに嫌われたいわけじゃないの。むしろ好かれたい。こんなことを誰かに思うのは初めてだよ。
押し付けたお金は制服のポケットに押し込み返された。面倒なやりとりにこっちもわざとらしいため息をついて、購入したビタミンドリンクを半分ほど飲み干す。なんでかな、苛立ってきた。
なのに目の前の人はくつくつと笑い出す。