わたしにとっては中学生になり初めてで、彼にとっては中学最後の夏休みが終わった。


クラスでカップル第1号が誕生していたことでしばらく話題は持ちきりだったけどそれもだんだんと静まり、今は髪を染めたいだのピアスを開けたいだの、爪に色を塗り怒られている女の子たちもいて、お洒落な子ほどランクが高いような風潮が出来上がってきた。



「陽花里さーん、おみ先輩通りますよー」

「え!」


気持ちを打ち明けてから、舞菜は不服そうな顔をしつつ廊下側一番後ろの席の特権を使ってそんな情報を教えてくれるようになった。

優しい。だけど光景はちょっと残酷。


廊下を通る晴臣先輩の隣には最近代わる代わる女の人たちがいる。

彼は彼女たちの視線の隙間でこっちをちらりと見て、わたしに澄まし顔を向ける。


「完璧に見せつけられてる…もう6回目だよ?しかも夏休み明けから毎日毎日!いや、会えるのはうれしいんだけど…でも」

「会えてるわけじゃないでしょ。見てるだけじゃない。女の子がいても話しかければ?」

「舞菜冷たい…」

「だって忠告したもん!」


そう。なのにまんまと惹かれ好意を自覚してしまったのはわたしの勝手。

彼も迷惑らしく気持ちを諦めさせようとしているのかああして見せびらかしてくる。