不意打ちで何かをしでかす晴臣先輩のほうがマイペースだと思う。
それなのにわたしの返事が不服だったのか彼から笑みが消える。好かれたいと思うわりに話すたびにうまくいかない。
「おれは、別に嫌われていい」
強がりのような言葉。
「晴臣先輩のこと、わたしは嫌いじゃない」
「煙草押し付けられそうになったのに?」
「押し付けられてても嫌いにはなってなかったと思いますよ」
何言ってるんだろう。恥ずかしいことを口走っている。でも嫌われていいなんて思ってそうにないのに言うから腹が立ってきた。
足元に捨てられた煙草。
あれが自分と重なる。
ちゃんと知り合ったのなんてつい最近のこと。
それなのにこんな感情になるのは可笑しい。
「なんかさ。…勘違いしてない?」
「べつにしてません」
含みのある言い方がいやで、ちょっと強気に彼を見上げる。
態度が悪いかもしれない。手当てをしてもらっておいて、だめな後輩かも。嫌われたくないって思ってるのにこれじゃ嫌われそうだよ。
晴臣先輩は感情の読み取れない表情でこっちを見下ろしてくる。
今度こそ煙草…もしかすると殴られるかも。
変だよね。その状況はなんとなく想像できるのに、この人を嫌いになる自分は思い浮かばない。