それにしても、受験かあ。わたしはやっと中学に慣れたばかりなのにあと半年後にはこの人はもういないんだ。
もっとうわさ話に耳を傾けていれば良かった。そうすればもっと早く存在くらいは知れたかもしれないのに。
「そういえば槙野ってバスケはけっこー上手いんだな」
突然褒められた。
「そんなことないです。運動はあまり得意じゃなくて」
「たしかに体育祭では微妙だったよね」
「晴臣先輩は活躍してましたね……って、なんで微妙だったって知ってるんですか…」
「さー?」
「……」
また不意打ち。いつも、なんでもそう。避けようにもできないし、近づかないって思っているのに無視はできない。舞菜、これはどうしよう。
問いかけに微笑むだけなんてずるい。
特別意味なんてない。もしかするとあまりにもわたしが鈍臭かったから目立ってしまったのかも。
それなのにどこかで、何かを期待している。
「晴臣先輩は部活入ってますか?」
「それもないしょー」
いや、それくらい教えてよ。
「もし入ってないなら今からバスケ部入ればいいのに」
「ははっ。さっき体育館入った瞬間みんな凍りついてたのにさすがにその空気を読めない行動はしないよ」
「え、そうでしたか?」
ぜんぜんわからなかった…。