そう思っていたから油断していたんだ。
「わっ……!」
「陽花里!」
ボールをドリブルしてゴールを目指して走っていたら相手側に押されてコート上で倒れ込んだ。
すぐに練習は中断され、ディフェンスをしていた先輩が駆け寄ってくる。
「ごめんね陽花里!大丈夫?」
「や…わたしがぼうっとしていたからです。ごめんなさい」
集中しきれていない。頭の中に常にあの人がいる。考えてしまう。どうしたら消えてくれるのか、そもそもどうしてこんなに気になるのか解らない。
迷惑をかけてしまった。
こんな状態でコート上にいちゃいけない。
差し出された手を掴んで立ち上がろうとしたけど足が痛くて立てなかった。嘘でしょう。
足首がじりじり痛い。
涙がにじむ。情けないよ。
「槙野、足痛い?」
「…え?」
顔を上げるとなぜか晴臣先輩がいた。
びっくりして声が出ない。なんでいるの?
「あーあ、腫れそうじゃん。練習は集中しないと迷惑っしょ」
「…そんなの、わかってます…」
悔しい。本当に迷惑だ。
「真波せんせー、とりあえず保健室連れてくよ」
「あらありがとう久遠くん。槙野さん、すぐ様子見に行くからね」
「はい…すみません」
立ち上がる拍子に痛みに顔を歪めるとなぜか彼が自分の背にわたしを乗せた。