思えば恋愛なんてしたことなかった。好き嫌いの判断くらいはできるけど、そういう意味合いの好きを感じたことがなかった。
そっか。でも先に言われておいてよかった気がする。カレーを頬張っていたのに真剣な顔で言われたから焼きそばを食べる手が止まってしまった。
「わかったよ。そういえば舞菜は好きな人いないの?」
「いるよ!お兄の友達!」
「てことは上級生?」
「うん。今度紹介するね」
舞菜は恋を知ってるんだなあ。どんな感じで、どうやって気づくんだろう。…盗まれたから揚げを見てあれになりたいとか思うかな。
「明日部活だよね?遅くなる前に遊び倒そう!」
「でも食べたら休憩しなくちゃだよ」
「若いから大丈夫〜」
おばさんみたいなことを言う。
こうしてわたしが楽しく過ごしている間、晴臣先輩は何処で何をしているんだろう。
楽しそうにしていてほしい。
煙草を武器に、なんて考えずに吸っていてほしい。
彼と会わなくても会っても彼がいなくても、こんなことばかり考えちゃう。
舞菜に言ったら勘違いされそうだから、言えない。
部活で学校にいる間も、学校に来てくれないか考えてしまう。それなのに夏休みに学校で会ったことは一度もない。
不良だもん。そりゃ来ないでしょ。