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昨日の話を舞菜にすると目をまるくした。
「そんなことがあってよく無事だったね…!」
よかったあと気が抜けた声で言って抱きしめてくる。お互い水着なので少し恥ずかしい。
ちょうどお昼過ぎに到着して、プールには入らずマイペースに焼きそばとカレーを買って広げたレジャーシートへ座った。
今日は晴れてよかった。あんなに綺麗な夕焼けが見えたなら当たり前か。
「おみ先輩って、他校や高校生も含めてこの辺じゃ一番の不良だって言われてるんだよ。喧嘩も強くて、モメごとばっかりで、悪いことも平気でして、女の子遊びもひどいんだって」
女の子遊び…。未知の世界。
「舞菜は詳しいなあ」
「だってわたしはお兄ちゃんが2年にいるもん。こいつには近づくなとか先生はこの人に懐けば間違いないとか部活はこれならハード過ぎないとか教えてくれるの。溺愛っぷりがすごいんだ」
そう言いながらうれしそうに笑う。わたしは上にきょうだいはいないからうらやましいなあ。
「そっか。晴臣先輩ってそんなに悪くて、近づかないほうがいい人なんだね」
「そうだよー。まあ確かにTシャツ投げてきたときは爽やかでかっこよかったけど…好きになったりしたらだめだよ」
「……好き?」
「うん。恋しちゃだめ」
考えてもいなかった。恋だなんて。