煙草って美味しいのかな…。不良が煙草を吸うって本当だったんだ。

先に出て行ってしまった彼の背中を見てちょっと残念な気持ちになる。あれ以来久しぶりに話したのにあいさつもロクにできなかった。

ため息をひとつこぼしてお会計を済ます。


「なあ、なんだっけ。名前」


自転車に跨ろうとしたところ、少し先にある備え付けの灰皿立ての前で煙草を吸う彼に話しかけられた。

まだ帰ってなかったんだ。


「えっと…陽花里です」

「ふうん。上の名前は?」


かあっと顔が熱くなる。ふつうそっちを答えるでしょう。可笑しいよ、わたし。


「槙野です」

「槙野か。ひとりで帰んの?遅いのに危ないよ」

「まだ19時半ですよ。それに明るいです」

「でも悪い奴らはいるよ、何時でも太陽が出ててもね」


なんだか自分のことを言っているみたいで、そんなに悪い人なのか、疑問に思う。慣れたら話しやすいような気もするけど、2回目の会話でそんなことを思うのは間違っているかな。


「じゃあどうしたら良いですか。今過去に戻れたとしても、こうして祖母におつかいを頼まれれば悪い奴らを気にするより祖母を少しでも楽させたい、良いことをしたいという気持ちが勝ってしまうと思うんです」


曲解だと言われるだろうか。