さっきまで、もう会うことはないのかもと考えていた晴臣先輩が立っている。
白いシャツを着ていてずるい。出会った頃と変わらず、まぶしくて、どこにも行かないようにと手を掴んだ。
目の前にいる。
「ねえ息してる?」
泣くのと手を掴むこと以外に何もできずにいると、本気で心配している顔が覗き込んでくる。
いや、どうしてあなた、そんな平然としているの。
「晴臣先輩……ひとりじゃ淋しくて耐えられなくてつらくて苦しくてまた死にたくなっちゃったんですか…?」
どうしよう。あげたことのある未熟な甘いクッキーと彼女が好きな甘いハーブティーと、ピアノはこのカフェにはないからもうひとつのアルバイトでお世話になっている教室に連れて行って元気付けたいけど、けっきょくはあの島で、今度こそ…?本当にわたしはそうしたいの?
したいこと、ちゃんとしよう。
もうあの頃とは違う。
彼は3度、自分の足でわたしに会いに来てくれた。
これが4度目。
あの頃持っていなかったものを、わたしは持ってる。
この人のこと、すごく愛してる。だから抱きしめた。強く、ギリギリ壊れないくらい。すると懐かしいお日さまのにおいがした。
「嫌です。生きましょうよ、これからは一緒に」
海に向かうしかなかったあの頃とは違うの。甘えに素直に従うなんて正直に言うともう嫌だ。
会いに来てくれたなら今度こそ救ってみせるよ。
「いや、そのために来たんだけど」
「へ……」
「ひとりで頑張ろうと思ってやってみて、今は絵本書いたり文章書いたりしてる」
「え…読みたいです!」
何それ。どうして、抱きしめ返してくれるの?
「けどもうそろそろひとりじゃ淋しくて耐えられなくてつらくて苦しくて、あんたの笑顔も涙も記憶に残ってて…会いたくて。だから一緒に生きてもらおうと思って、ヤマにこの場所聞いて、甘えに来た」
嘘じゃない。夢じゃない。