牛乳とクリームチーズを掴んで残るはお野菜。このふたつからして献立はシチューかパスタと見たので、できればピーマンかトマト、あとは茄子のどれかが良いと思いながら野菜コーナーへと回る。


あ、パプリカがある。

黄色と赤。白いものに浮くそれを想像してどっちの色の気分か考える。黄色はなんだか甘い気がするし赤は映える。悩むなあ。



「おれは黄色が好きかな。緑のピーマンとか赤いやつよりなんか甘い気がしない?」


ひょいっと横から目の前に飛び出てきた骨張った腕。そして手が黄色のパプリカを掴んだと思えばわたしの手のひらに置いてきた。

弾かれたように顔を上げると、隣に晴臣先輩が立っていた。


「え……ええっ!どうして!?」

「この辺で煙草買わせてくれるのこのコンビニだけなんだよね」

「煙草……あ、わたしも黄色だと甘くなる気がします」

「ははっ、そう?」


そう?って、晴臣先輩がそう言ってきたのに理解できないみたいな表情で首を傾げてくるのはどうしてですか…。


だいたい煙草って。背丈も顔もあどけないのに買わせてもらえちゃうなんて、このコンビニだめじゃない?

晴臣先輩は常連さんのようで、高校生らしき店員さんも慣れた手つきで指示された銘柄の煙草2つとお金を引き換えにした。