その言葉を聞いた瞬間、電話を切って再び部屋を飛び出した。
早く見つけなきゃ。早く、隠さなきゃ。いなくなってしまう前に隠さなきゃ…隠さなきゃ…という思考で頭がいっぱいになる。
どうしよう。どうしたらいい?晴臣先輩はこの状況を知ってるの?どうして、追われているの?逃亡って…何で…。
丘の途中、フェリー乗り場に続く道で晴臣先輩を見つけた。
「待ってください!晴臣先輩!」
お願い、いかないで。
そう祈るとあの別れ卒業式の日と違い振り向いてくれた。立ち止まってくれた。ほっとして駆け寄る。
「今日も海鮮丼食べましょ…」
そう言うと晴臣先輩は微笑んでわたしの髪を撫でた。
「寝ぐせついてる。探させてごめん…戻ろう」
よかった。離れないでいてくれた。
だけど、来た道を行こうとしたわたしたちの肩を誰かが叩いた。
「久遠晴臣くんだね?」
振り向くて警察が3人いて、わたしは咄嗟に晴臣先輩の手を掴む。
そのまま引っ張って逃げようとしたけど、晴臣先輩は立ち止まったから前のめりになるだけで進めない。
「はい」
静かな肯定の返事。
ちょっと待って…。
どうして答えるの。どうして、笑っているの。
「久遠道臣さん殺人未遂容疑で話を聞かせてほしいんだ。署まで同行頂けますか?」
殺、人……。
あの理事長を……お父さんを…本当に?
「はる…っ」
彼の顔から笑みが消えた。