味方でいるにはどうしたらいいの。
どうしたら彼を救えるの。
「傷つくよ。おれが槙野を傷つけるように…槙野はおれにとって、ただ唯一感情が生まれる存在だから」
一緒に死ぬこともできない。
傷つけることしかできない。
そんなわたしを、やっぱり特別にしてくれる。
「ありがとう。もう、宿行こう」
「…はい」
雲がなくなって、晴れ間の中で、やっぱり星が瞬いた。
暗闇のままでいて帰り道をわからなくしてくれたらよかったのに。
その夜は同じ部屋で、となりで眠った。
身を寄せ合うことはなかったけど手は繋いだまま。
晴臣先輩のとなりで、わたしは高薮くんの笑顔を思い出していた。
何度も背中を押してくれた人。
大切にしてくれる人。大切にしている人。
きっと一緒にこれからも生きてくれる人。
明日…帰ろう。晴臣先輩にそう言おう。一緒に帰ろうって。
陽の光に目を開けると、となりにいたはずの晴臣先輩がいなかった。
荷物はある。机の上にあの刃物とスカーフが置いてあった。携帯はない。散歩かな、と、追いかけようと顔を洗って宿を出た。
制服は乾いていたけど、昨日の海のにおいがした。
憎いくらい良いお天気だった。
昨日の丘かな。と小さな島を半周したけど見つからなくて一度宿へ戻る。
携帯が鳴った。見ると高薮くんの名前が表示されていた。
「もしもし」
「あ、槙野。おはよう」
「おはよう。…今日帰るね」
「あの人と一緒にいる?」
「あ、今はいない……」
「あの人が逃亡してるってニュースになってる。警察が探してるみたいで……」