飄々としていて余裕そうな、少し大人びたクラスメイト。最初は一目置かれてみんな遠ざかっていたのに今じゃ人気者は誰かと聞かれたらみんな彼だと答えるだろう。

高藪くんってあまり話さないけど、話すと言葉の節々に気遣いが覗くんだ。真面目なのは高藪くんのほうだ。


「ありがとう。高藪くんも空手の試合があったらクラス全員呼んでよ。きっとみんな応援したいから」

「はは。あ、それ洗えてないね。貸して」


すいっとビーカーをとられた。


「ごめん、気づかなかった」


ほかの薬品と混ざったら危なかったかもしれない。


「ぜんぜん。そのために2人いるんだし」


そうか、1人じゃ気づけないことや見逃しちゃうもの、できないことがあるから係や当番って大抵2人組なんだ。考えたこともなかった。


「高藪くんってすごい。わたしが知らないこと、いっぱい知ってるかもしれない」

「そう?槙野は俺にできないお弁当作りを毎日してるよ」

「あれは夕飯の残りものばかりで…」


すごくないんだよ、と言おうとしたら高藪くんが静かに笑った。


「俺もから揚げ食べたかったな」


あの人にとられたから揚げ。口に吸い込まれ、すっと伸びた喉ぼとけを動かしてく。

思い出してしまって、身体が火照るのを感じた。