危険だって言われていた。
晴臣先輩が学校に来なかった間、何度も「あいつが来なくなってよかった」なんて心無い言葉を聞いた。佐伯さんも、彼のことを悪く言った。わたしは何も言えなくてくやしかった。
本当は違うの。危険かもしれない。わたしが知ってる彼はたった一部なのかもしれない。それでも、やわらかな香りがする人なの。優しく笑うことができる人なの。
「変わったよ」
「…そうですか」
「うん。槙野だって変わってる。彼氏なんかできちゃってるしさ」
なんとも言えない視線を向けられる。
だけど変わらないこともたくさんあるよ。
いつまでも、何があっても、きっとわたしは晴臣先輩の味方だ。
「晴臣先輩は学校ちゃんと通ってますか」
追いかけようかと悩んで、やめた彼の進学校。
「うん。最近は行ってないけど」
お家のことがあったからだろうか。
「だって槙野、おれを追いかけて入学してくるかと思ってたから待ってたのに来ねーんだもん。つまんね」
「えっ」
うそ?本当?わからない。
「なに愕いてんの?ふつうあんな好き好き言われたらちょっとくらいそう思うっしょ」
本当に待っていてくれたらしい。そうか。追いかけてもよかったのかな。
「悩んだんですけど…やっぱり文系はどうも苦手で」
晴臣先輩を想うと、くるしくて切なくて、それでも甘かった。