この場所に来たこと。一緒にいたこと。
出会えたこと。
「お願いします!綺麗な海と太陽を後ろに!ねっ」
強引に腕を掴むと、やれやれと息を吐いて隣に来てくれた。
ひとつのカメラをぐっと見る。
「笑えよ、槙野」
そんなことを囁くから、ちょっと涙が出そうになる。口角がふるえた。
「送って」
赤外線を向けられる。
一瞬で届いた写真を見て「ふーん」と微笑むから、わたしも画面を覗く。ふたりとも笑っている。ちょっとわたしからは緊張も伝わる。
「いいじゃん。仲良しな先輩後輩って感じ」
「そうですか?晴臣先輩童顔だから同い年くらいに見えると思います」
少年のようなあどけなさ。
無邪気、にはほど遠いけれど。
意地悪を言うみたいに言うと頭をぐりぐり撫でられた。ぜんぜん痛くなかったけど、痛いって笑っておいた。穏やかな空気に感動してる。
ふわっと懐かしい香り。さっきからもうずっとしてるそれ。
「晴臣先輩って、煙草のにおいに混ざってお日さまのにおいがします」
「え、そう?」
「はい。預かった白いTシャツからもしたし、前に自転車ふたり乗りした時も今も変わらない。変わってなくてほっとしました」
まるで風に色を付けるみたい。
澄んでいて、きれいで、心地よくて、安心する。