これから先も願い続けるんだろう。

わたしが、幸せにできなかった、幸せにしたかった、それ以上の分。

叶ってほしい。



フェリーが島にたどり着いたところで携帯を出すと、広い手のひらが画面を覆った。


「明日まででいいから場所は言わないで。そう言われたって言っていいから」

「でも…」

「頼む。明日まで」


断れないこと、見透かされてるみたい。

高藪くんには目的地に着いたこと。場所は明日言うことを正直に伝えた。


絶対に、裏切りたくない。


あんなに優しい人のこと。……好きな人のこと。



「槙野、こっち」


手招きされ、着いていく。島は海と山に囲まれていて空気が澄んでいた。


「晴臣先輩、どうしてこの島に……」


丘を登ると緑の芝生の広場に出た。

晴臣先輩のお母さんが描いていた場所だとすぐにわかった。


「昔此処に住んでたんだ。全然覚えてないけど」

「すごい……本島がきれいに見える」


海と本島。なんだか異世界に来たみたいな気分になる。さっきまであっちにいたとは思えない。

ゆったりとした波の音。

花のにおい。ぬるい風。

全部を、この人と感じているなんて夢のよう。


「ねえ晴臣先輩、写真撮りませんか?」

「は?」


びっくりしたような顔をする。嫌だったかな。でも何度か後悔したんだよ。残しておきたい気持ちがあるんだよ。