彼もさすがに高速道路ではヘルメットをするみたいで準備をしている。
晴臣先輩。
泣くなって言われても、泣いちゃうよ。
そんな笑顔見たのは久しぶりすぎて。
まさか見られるなんて思っていなかったから。
高速道路を抜け、着いたのはフェリー乗り場だった。
ヘルメットを渡すと「船平気?」と聞かれたから首を横に振る。
「乗ったことがないからわからないです。でも乗り物酔いはしたことないです。バイクも、楽しかった」
叶わないと思っていた約束のふたり乗り。一生の記憶がまた増えた。
「ふうん、よかった。船は、気分悪くなっても降りれないからやめとくか」
先に聞いてくれたらよかったのに。わたしも、何処に行くのか聞けばよかった。
「乗ってみたいです!乗らないとわからないし…海の真ん中行ってみたいです」
晴臣先輩が行きたい場所はこの海の先なんでしょう。それなら、行かないなんて選択肢はないよ。
「はは、海の真ん中ね。じゃ、付き合って」
軽く笑われながらチケットを手渡される。わたしには往復券で晴臣先輩のほうは片道券。
帰らないつもり…なのかな。
それにしては「いられるまで」って曖昧なことを言っていた。
何度も後悔しているのに、晴臣先輩の本心に迫るのは、やっぱり勇気が持てない。
自分から話してくる人じゃないのに。
聞いてあげなきゃ、抱えたままなのに。