化学室の雰囲気が好き。普段の生活じゃ使わないような器具を各班用にセットしながら、この教室は全学年が使うからあの人も入ったことがあると考えると歪な場所のように思えた。
「槙野って静かなのに、ああいう雰囲気の先輩と関わりあったんだな」
いつも多くは話しかけてこない高藪くんが話しかけてきた。勉強もできてクールで顔も良いうえ空手の腕前がすごいらしいので初めのうちは同性からやっかみを受けていたみたいだけど、飄々としているから最近じゃ彼の周りから友達が耐えない。
笑うと頰にえくぼができるんだ。だけどレア。
道を外れたことがなさそうな彼からしてみればあの類いの人たちは理解できないんだろうなあ。同感だ。
「関わってるわけじゃないよ。体育祭の時にたまたま近くにいて着ていたTシャツを渡されたの。暑かったみたいで」
「ああ、あの人活躍してたね」
「そういえば高藪くんもすごかったね。組別リレーのスターター。1年で抜擢されるのめずらしいって聞いたよ。わたしは運動だめだからちょっとうらやましい」
運動神経は皆無だけどバスケ部に入ってしまったから大変。でもリレーやマラソンと違ってボールとかゴールって対象があると走りやすい。
「バスケ部じゃん。がんばれ」
もっと上手くなりたいなあと思っていることに気づいてくれたらしい。