正解なんかじゃ救えない。

やっぱりわたし、おこがましくても、力不足でも、お節介でも、不要だと言われても、彼のこと救いたいんだ。彼にとって意味のある存在になりたいんだ。


それが一番の望み(、、)だった。


彼のもとへ走っていく。


校舎を飛び出すと、彼も門の外へ出て行こうとしているところだった。



名前を呼ぶのは、久しぶり。

姿をこの目で直接見るのも久しぶり。


ねえ、ずっと会いたかった。



「晴臣先輩……!」


お願いだから、今度はこっちを向いて。


聞こえなかったのか、聞こえていてなのか、わからないけどこっちを見てくれないままバイクが前に進もうとする。

それでいいの?このままでいいの?

それじゃ嫌だから、今でもあの人のことを考えてしまうんじゃないの?


駆け寄って、逃がさないとハンドルを握る腕に自分の腕を絡ませる。

弾かれたように晴臣先輩はこっちを見る。顔を合わせるのはあの卒業式ぶり。


「免許…とりましたか?」


びっくりしたような表情を浮かべている。呼んだの、聞こえてなかっただけみたい。

頷いたのを見て、わたしはバイクの後ろにまだかった。


先生たちがわたしの名前を呼んで追いかけてくる。


「出してください!」


あなたとふたりで、ゆっくり話がしたい。

どんな時間を過ごした?
変わったことはある?
それとも、変わらないかな。

知りたい。


いつか約束をしたふたり乗りのバイクは、風を切るように走り出した。